慶應義塾

AIでのやらかしとHuman-in-the-Loop|総合政策学部長補佐 古谷 知之

公開日:2026.06.09

大学教員を長くやっていると、仕事で「やらかす」ことがしばしばある。

先日もやらかしてしまった。ある重要なオンライン会議で、意図せず議事録生成AIが立ち上がってしまい、会議をすべて録音してしまったのみならず、ご丁寧に要約までつけて参加者全員に自動送付された。もちろん、事務方にはこっぴどく叱られた。「先生に対しては不信感しかありません。」面目ない。当方、平謝りである。謝るのは、タダだ。

学生さんの失敗なんて、教員たちの失敗に比べれば、たいしたことはないですよ。

でも、生成AIの使い方次第で人生を狂わせることもあるご時世です。

今まで以上に、十分に気をつけてください。

子育てのアドバイスも、勉強の仕方も、入学試験や就職試験の出願書類も、なんでも生成AIに聞くのが当たり前の時代。AIで生成された書類や論文をAIに採点させ、人間が構築したシステムの脆弱性に、人間が気づく前にAIが暴き出す。AIとロボットに育てられた子弟が大学に入学する日も、そう遠くないだろう。

AI前提社会だからこそ、キャンパスとして潤沢な計算資源を用意すべきなのだろうが、悲しいかな、計算資源の面ではまだまだなSFCである。いつか大型の資金獲得に理解のある「おかしら」が現れたら、学生のインターン先企業よりはるかに優れた計算資源を提供できるといいなと、思っている。むろんSFC教員にはAIの導入に対して多様な考え方があり、教育研究に積極的にAIを活用する方もいれば、断固反対という方もいらっしゃる。反対派への対処方法も、生成AIがそっと教えてくれたりもする。

私(SFC3期生)がSFCに入学した頃(1992年)は、学生一人一台ノートPCを生協などで購入した(させられた)時代だった。そんな経験に近未来を感じていた記憶があるものだから、ある会議で「学生一人一台ずつ人型ロボットか自動運転車両を導入してはどうか」などと発言したところ、「SFCがディストピアになるからやめろ」と、これもまた猛反対された。ロボットで溢れたキャンパスは、想像するになかなかシュールである。そのうち学生の代理であるロボットが授業に出席し、教授の代理のロボットが教える時代になるのだろうか。まずは、事務室窓口の一次対応を生成AIにやらせるとか、特別教室にロボットを数十台くらい置くとか、自前で人工衛星を打ち上げるくらいから、はじめてはどうかしら。

AIによる自律的な判断過程の中に人間の意思決定を意図的に組み込むことを、「Human-in-the-Loop」という。仕事柄、こうした意思決定支援の演習に関わる機会がある。そしてAIのほうが「おかしら」より優れた判断を下す場面をしばしば見てきた。演習であれば、人間による意思決定の失敗の結果として、国家や組織が甚大な被害を被ることになっても、訴訟を起こされようとも、演習をやり直せばよい。しかし現実の場合には、そう言うわけにはいかない。人間にできてAIにできないことの一つに、意思決定の失敗に対する責任をとることがある。責任のとり方も、生成AIに聞けば良い。もしかすると、SFCの将来構想や運営に関する改革方法も、AIが提案してくれるのではないか。

・・・などと駄文を書いていたら、すっかり夜が更けてしまった。

こんなことなら、生成AIに「おかしら日記」を書いてもらえばよかった。

そんな折、SFCのテック系教員・研究室が集まった、「SFC Tech 2026」というイベントを、SFCでORFが終了した翌日の2026年11月24日(火)午後に三田キャンパスの北別館で開催することになった。私の研究室からは、鉄道模型にするかドローンにするか、迷っているところだ。SFCあるいは慶應大学の研究室と共同研究を検討されているテック系企業・団体の皆様、是非お越しください。詳細は、別途ご案内する。